
satomi
ソウルを歩くとき、私たちはつい急ぎ足になってしまう。
けれど、景福宮の西側に広がる「西村(ソチョン)」には、どこか穏やかな時間が流れる。
今日は、日本から遊びに来てくれた大切な友人を連れて、私の好きな「西村」をひと繋ぎにした1日のプランを。
09:30 | 朝のレコードと、モーニング。
カフェ・シノラ
西村の朝は、レコードの柔らかな音に包まれて始まった。
まだ街が完全に目を覚ます前、静かな路地に佇む『シノラ』の扉を開ける。

レジで先に会計を済ませるのが、この店のさりげないルール。
注文したのは、ふっくらとしたオムレツと、鮮やかなエンドウ豆のサンドイッチ、そして、立ちのぼる湯気が美しい温かい紅茶。
もし運良く空いていたら、迷わず奥のソファー席を狙ってみてほしい。
深い色のソファーに身を沈め、壁に並んだレコードを見上げていると、心が解けていくのがわかる。

11:30 | 川島小鳥さんが切り取る一瞬。
石坡亭ソウル美術館
現代アートと、朝鮮時代の美しい伝統家屋「石坡亭(ソッパジョン)」が共存するこの場所で、写真家・川島小鳥さんの展示「サランラン」が開催されていた。

私は川島小鳥さんの作品が大好きで、以前、大阪でも二度ほど展示に足を運んだことがある。
けれどソウルで出会う作品は、過去の作品も集結したこれまでにない圧倒的なスケール感だった。見慣れたはずのソウルの街や写真に映し出された表情が、彼のレンズを通すとどうしてこんなに愛おしく映るのだろう。
友人と二人、言葉を忘れて見入ってしまった。


※現在は展示を終了しています
13:30 | サムギョプサルは、独創的に。
アイノガーデンキッチン
少しお腹が空いてきた頃、当日の朝に「キャッチテーブル」で予約を入れておいた一軒家へと向かう。
『アイノガーデンキッチン』は、その名の通り、庭園の中に迷い込んだような開放感がある。
光がたっぷりと差し込む店内は、あたたかみのあるインテリアで統一されていて、そこにいるだけで心が解れるような心地よさがあった。

ここの「サムギョプサル定食」は、私たちが知っているそれとは少し違う。
どこかエスニックな香りが漂う、ここでしか出会えない独創的な味付け。一口食べれば、肉の旨みとともに、新しい感性が刺激されるのがわかる。
「こんなの初めて食べた」と目を輝かせる友人の顔を見て、この店を選んだ自分を褒めたくなった。
大切な人を連れて行きたくなる店というのは、きっとこういう場所のことだ。

15:30 | お土産は、お菓子以外で。
雑貨店巡り(ワンモアバッグ / Dancing grandma)
西村の路地裏を歩くなら、感性の向くままに動くのがいい。
『Dancing grandma』の扉を開けて、温もりを感じる編み物バッグを手に取ってみる。ここでは編み物のワンデイクラスも開催されているらしく、いつか時間を作って参加してみたい…なんて想像が膨らんでしまった。




そこから少し歩いて『ワンモアバッグ』へ。
ここは雑貨好きにはたまらない。
韓国の若手クリエイターたちが手がけるシールやキーリングは、どれも個性的で、自分だけの「特別」がきっと見つかる。バラマキ用のお菓子もいいけれど、その人の生活にそっと入り込むような「小さな宝物」を贈るはどうだろう。雑貨を手に取って眺める時間は、自分自身の『好き』に触れること。自分自身の心の余裕を取り戻す時間でもある。



18:30 | ジャガイモチヂミと、マッコリの夜。
ソチョンゴッカン
西村の夜は、モダンな韓屋で締めくくりたい。
「ビールは少し苦手だけれど、マッコリなら飲みたい」という友人のリクエストで訪れたのが『ソチョンゴッカン』だ。伝統的なおつまみを現代的な感性でアレンジした料理と、厳選された伝統酒が揃っている。

香ばしく焼き上がったジャガイモチヂミの、その一口目の幸福感。そこへ、冷えたマッコリを流し込む。伝統的なのに、どこか新しい。そんな西村の街そのものを体現したような夜。
派手な観光地ではないけれど、ここには確かな生活の温度がある。忙しい日常の中で私たちが欲しているのは、こうした「心地よい余白」なのかもしれない。
『また明日からも頑張れそう』
友人のそんな一言に、私の方が救われたような1日だった。